これまで当サイトではUAV(ドローン)測量の利便性を色々と解説させていただきました。もしまだ記事をお読みでない場合は、ぜひとも別記事「UAV写真測量とは」からお読みいただきたいと思うのですが、これまでの解説記事を読んで「よし、やってみるか!」と決意したとして、ドローンを購入すればすぐに始められるのかというと、残念ながらそうはいきません。
UAV(ドローン)測量を行うには色々と守らなければならないルールが存在します。業務で行っている以上、ルール違反は信用を損ねたり、重い罰則を科せられてしまうこともありますので、各ルールは押さえておかなければならない大事なポイントです。
今回の記事を読んで安心・安全運航を心がけるようにして下さいね。
なお、以下は読みやすさを優先してUAV(ドローン)を単にUAV、あるいはドローンと表記させていただきます。
測量のルール
ご存知の通り、測量を行うためには「測量士」や「測量士補」の資格が必要となります。これは測量法という法律によって定められています。
と言ってもドローンパイロットが資格を有している必要があるかというと必ずしもそうではありません。ただし、測量結果は成果物として納品しなければならないものですので、無資格のドローンパイロットに依頼する場合には監督者としての「測量士」が別に必要になります。
UAVを用いた公共測量マニュアル(案)が定めるルール
(案)とついているのでおかしな感じがするかもしれませんが、現状UAV測量を行う上での指針となる重要なマニュアルが、国土交通省国土地理院が作成している「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」です。
ここでは代表的なルールをいくつか列挙しますが、UAV測量を行う方は必ずマニュアル全てに目を通すようにして下さい。
- 自動航行機能と、緊急時のリターントゥホーム機能を有したドローンを使用すること
- 露出やISO、絞り等マニュアル設定が行えるカメラを使用すること
- 手振れ補正機能などを手動でオフにできるカメラを使用すること
- 撮影はオーバーラップ率80%以上、サイドラップ60%以上の重複率で行うこと
法律が定めるルール
UAVを飛行させるうえで正しく理解し、守らなければいけない法律です。UAVに対して直接的に規制を設けた法律から、間接的に関わってくる法律まで様々なものがあります。
全て覚えるのは大変かもしれませんが、国の定めるルールですのでしっかりと把握し、遵守するようにして下さい。
小型無人機等飛行禁止法
通称「ドローン禁止法」です。この法律によって以下の場所でのUAV飛行は制限されますので、フライト予定地がこの法律に該当しないか、きちんと確認しておく必要があります。
- 国の重要施設等(国会議事堂、首相官邸、対象危機管理行政機関庁舎、最高裁判所、皇居・東宮御所、政党事務所等)
- 対象外国公館等
- 対象原子力事業所
具体的にどこの省庁や原発が対象となっているかは政令で確認できます。
この法律で注意しないといけない点は、対象施設の上空及び敷地内はもちろんのこと、その周囲300メートルを基準に番地単位で指定されたエリアについても、同様に飛行制限がかかるという点です。
もしこの法律に該当するエリアを飛行させなければならない場合には、所定の申請書を提出する「通報」という手続きを行う必要があります。
航空法
ご存知の方も多いと思いますが、UAVを飛行させるうえで避けては通れない重要なルールを定めた法律です。この法律により、飛行空域及び飛行方法が制限されています。
- 空港周辺の飛行禁止
- 高度150メートル以上の上空の飛行禁止
- 人口密集地域(DID)の飛行禁止

画像出典:国土交通省
- 夜間飛行の禁止
- 目視外飛行の禁止
- 第三者、第三者の財産から30メートル以内での飛行の禁止
- 催し物上空での飛行禁止
- 危険物輸送の禁止
- 物件投下の禁止

画像出典:国土交通省
以上のように決められています。
この中の「人口集中地区」、「第三者からの距離の確保」、「目視外飛行」については高確率で該当してしまう可能性があります。
フライト予定地がこうしたケースに当てはまる場合には、国土交通省航空局に対して飛行の許可・承認申請を行い、「許可」及び「承認」を得なければなりません。飛行禁止空域をフライトさせたい場合には「飛行許可申請」を。禁止されている方法でフライトさせたい場合には「飛行承認申請」を提出します。
申請はいくつか方法がありますが、DIPSという国土交通省航空局のオンライン申請サービスが始まっていますので、そちらを使うのが分かりやすいかと思います。
なお、飛行申請はフライト予定日から起算して最低でも10開庁日前までに行っておく必要があります。申請はすぐに受理されるわけではなく、また、申請が通らないということもあり得ますので余裕を持った申請を心がけて下さい。
道路交通法
道交法にはUAVに対しての直接的な規制はありませんが、低空を飛行させたり道路を跨いでフライトする可能性があるため、道路交通法第77条4項が適用されます。
要約すると
『道路に関連することで、危険が生じたり交通に影響を及ぼす可能性のある行為を行う場合には、管轄する警察署長の許可を得なければならない』
ということになります。
「道路上空を横切る程度だから」と、許可を得ていないパイロットを見かけることもありますが、厳密には違法となります。また、道路を用いて離発着を行うようなケースでは、必ず警察との折衝が必要となります。
民法
民法第207条により、土地の所有者には「土地の所有権」が認められています。これは地上だけでなく上空にも及ぶとされており、UAVで第三者の敷地上空を勝手にフライトさせることは不法侵入となります。
解決するにはその土地の所有者から飛行の許可もしくは同意を得る必要があります。測量を行う土地そのものはクライアントの管理する場合が多いので問題はないと思いますが、測量に際し隣接する土地家屋の上空まで飛行エリアとなる場合には注意が必要です。
電波法
UAVによっては特殊な周波数帯や出力の電波を発するものがあり、日本では無資格での運用が認められていない機体や送信機が存在します。
日本で正式に市販されている機体やシステムであれば問題ありませんが、産業用ドローンは改造を行う場合も多いため、違法となってしまう電波を使ってしまっていないか注意する必要があります。
特に気を付けていただきたいのが、日本で売られているものと全く同じ機体の海外モデルです。安いからと海外で購入したり輸入したりしてしまうと、日本の技術適合認証(技適)を取得していなかったり、違法な周波数、違法な出力となってしまうことがありますので、国内正規品の購入を心がけましょう。
個人情報保護法
撮影した画像・映像に第三者のプライバシーを侵害するものが映り込んでしまった場合には編集で削除してからクライアントに納品する必要があります。公共事業等への成果物納品なら問題ないと思いますが、例えばクライアントが3次元モデルをインターネットに公開しようとしている際などに注意が必要です。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
通称「産廃法」です。事業に用いて発生した廃棄物は「産業廃棄物」となります。万一ドローンを海や山などに墜落させてしまった際、機体を回収しなかったりできなかったりすると不法投棄になってしまいます。
事故を起こさないということが第一ですが、万一上記のようなケースで機体の回収が困難である場合には、必ず土地管理者か警察に連絡を入れて下さい。
刑法
汽車、電車、艦船の往来に危険を生じさせてしまったり、損傷を与えたりしてしまうと刑法違反で刑事罰を受けることになってしまいます。これは過失であっても免責されませんので、フライト予定地が線路と隣接しているケースなどでは細心の注意を払う必要があります。
条例
国のルールとは別に、各自治体が定めるルール(地方条例)が設けられている場合があります。ドローンの飛行を禁止する条例も増えてきていますので、該当地区をフライトさせる際には必ず管理者の許可を得てからフライトさせるようにして下さい。
以上のように、UAV写真測量を行う上で、というよりもUAVを飛行させること自体に様々なルール・規制が設けられています。
事業で飛ばす以上、一般の方以上にこれらルールの遵守が求められますので、この記事を熟読してしっかりと覚え、安全運航を心がける必要があることを覚えておいて下さい。